2025年版
DevOpsにおけるテスト
レポート

Presented by mabl

mablの第6回「DevOpsにおけるテストの現状」レポートへようこそ。このレポートでは、ソフトウェア開発ライフサイクル全体において、ソフトウェアテスト、テスト自動化、組織の成長、およびDevOpsの成熟度が与える影響を分析しています。

現代のソフトウェア開発環境は、リリースの頻度、生成されるコードの量、または自動化による時間の節約など、あらゆる面でスピードへの追求が特徴です。しかし、この絶え間ない追求は、ソフトウェアの複雑さが増す中で品質を維持・向上させる上で重大な課題をもたらします。開発プロセスのあらゆる側面から750人以上の専門家を対象としたこの調査では、多様化するテストツール(企業の23%が5つ以上のテストツールを使用)とパッケージ化されたアプリ管理の複雑さが、生産性のボトルネックやテストカバレッジの不足を引き起こしていることを示しています。

しかし、課題と並んで、将来に向けた多くの機会も存在します。この調査のデータは、62%の企業が自動化の改善やテストプロセスへのAIツールの導入に予算を割り当てるなど、品質への戦略的投資の必要性を認識している組織の姿を描いています。このリソースの流入は、組織がテスト実践を変革し、ワークフローを効率化し、品質ギャップを埋める機会をもたらします。

最終的に、2025年DevOpsにおけるテストレポートで明らかになったトレンドとデータは、自社の実践をベンチマークし、品質プログラムの成長と持続可能性へ、どのように、どこに投資するべきか、戦略的な意思決定を導くために活用すべきです。業界全体を俯瞰した視点は、トップから始まり組織を変革する品質文化の推進に必要な情報を提供します。

進化するDevOps環境

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組織がDevOps変革を進める過程には微妙な違いがあることを理解した上で、現在の状況を把握することは、ソフトウェア開発とテストの現状のコンテクストを与えるため重要です。各組織の道筋は異なるものの、私たちはそれを4段階:導入初期/検討段階、導入推進中、ほぼ導入完了、完全導入、でそれぞれ区分けします。これにより、チームが継続的インテグレーション、デプロイメント、改善という目標に向かって取り組む中での傾向と課題を見極めることができます。

DevOps文化を採用するチームの速度は驚異的です。明らかなメリットにもかかわらず、2024年に「ほぼ」または「完全に」DevOpsを導入している組織は33%に過ぎませんでした。今年、その数字は60%にまで急上昇し、34%が組織全体でDevOps文化、KPI、およびDevOpsの実践を完全に取り入れていると報告しています。

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昨年は技術的制約が予算を上回り、品質への投資拡大の最大の障害となった初めての年でしたが、その傾向は2025年も続いています。これは特にDevOpsを完全導入した組織で顕著で、34%がこれを最大の阻害要因として挙げたのに対し、予算を主な懸念事項として挙げたのは20%でした。一方、DevOps変革で進展を遂げている組織では、予算が再び最大の懸念事項として挙げられ、29%が最も大きな阻害要因として報告しております。

DevOpsの成熟度と同様の傾向として、統合テストが計画において重要な位置を占め続けていることが分かります。回答者の81%がエンドツーエンドテストに関する統合または部分的に統合された戦略を持っていると回答しています。しかし、これは88%の企業が2つ以上のテストツールを使用していると回答しているデータによって明るみとなっています。驚くことに、23%の企業が5つ以上のツールを使用していると報告しています。2024年対比で8%増です。

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2025年に見られる顕著な変化の一つは、AIの影響力拡大とチームがDevOpsの成熟度を高めるにつれてテストの複雑さが増していることです。これは、組織がAI駆動の自動化と統一されたテストソリューションへの投資を優先し、課題に対処し高い品質基準を維持する必要性を浮き彫りにしています。

リリース速度とパッケージアプリがテストを変えている

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「次の大ヒット商品」を追求する執念が、企業にイノベーションを迅速に提供することを促し、リリース速度の大幅な加速を促しています。実際、回答者の40%が、昨年同時期よりも50%以上の速度でコードをデプロイしていると回答しています。DevOpsの実践の採用がこれをさらに押し進め、完全にDevOpsを導入している組織の50%がリリース速度を50%以上向上したと報告しています。

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この加速するペースの主要な要因は、開発ワークフローにおけるAIの採用です。平均して、組織の55%が開発とテストのプロセスでAIを活用しています。DevOpsを完全に取り入れたチームでは、その割合が65%とさらに高くなっています。これにより、開発者は前例のないペースでコードを作成できるようになり、結果リリースサイクルの短縮につながっています。長期的に見れば間違いなく有益ですが、短期的に見るとテストチームがペースを維持するプレッシャーを増加させています。

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複雑さをさらに増している要因として、Salesforce、SAP、Microsoft 365、Workdayなどのパッケージアプリの活用が拡大しています。テストケースの対象製品において、少なくとも1つのカスタムアプリケーションと1つのパッケージ化されたアプリケーションを使用していると回答した人は、ほぼ半数(49%)に上ります。さらに39%が複数のカスタムアプリケーションを使用していると報告しています。これらのアプローチは速度とコスト効率の点で多くの利点を提供しますが、同時に新しいテスト課題も生み出します。第二の製品の品質に依存する製品の品質を維持することは本質的に複雑です。外部依存関係、サードパーティのアップデート、構成や体験の変更を余儀なくします。これはチームが高品質基準を維持するために様々なテストツールとソリューションに依存する必要があります。

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品質がイノベーションに追いついていない

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イノベーションが進化し続ける一方で、リリースされるものの品質との間には乖離が生じています。これは製品の長期的な安定性において明らかに懸念材料ですが、顧客満足度にも大きなリスクを及ぼす可能性があります。当社の調査では、品質チームが直面している一連の重要な課題と、その乖離の原因となる要因が明らかになりました:

  • 生産性の低下:テストメンテナンスがチームの20%の時間を消費
  • 不完全なカバレッジ:80%以上のカバレッジを達成しているチームは14%のみ
  • 顧客報告のバグ:本番環境のバグの3件に1件が顧客によって発見される
  • テストのサイロ化:82%のチームが複数のテストツールを使用しており、統一テストを妨げている


どこでチームの時間が費やされているか

2年連続で、テストメンテナンスがチームの時間使用における最も重要な用途として報告され、全体の20%程度、つまり毎週1日分の作業時間を占めています。さらに、テストケース管理やバグの特定と修正に費やされる時間を加えると、現在のチームが策定している計画ではテスト自動化の基準が満たされていないことが明白です。

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テストカバレッジの不足

生産性の低下に拍車をかける要因として、テストカバレッジの不足が挙げられます。エンドツーエンドテストのカバレッジが80%を超えるチームはわずか14%に留まっており、これは2024年に報告された9%からわずかに改善された数値です。しかし、開発におけるイノベーションのペースを考慮すると、この改善は微々たるもので、品質が開発のペースに追いつくためにはテストカバレッジの向上が必要があることを示しています。ここでの一つの関連要因として、あまりにも多くの時間がメンテナンスに費やされ、テストカバレッジが犠牲になっている可能性があります。

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誰がテストしているかが重要

シフトレフトアプローチを適切に実施すると、ソフトウェア開発ライフサイクルの早期段階でテストを統合し、製品最終成果物に対する全員の責任感を高めることで、品質向上に効果を発揮します。「早くテスト、頻繁にテスト」という原則に従うことで、チームは問題点を早期に特定し、本番環境への影響を最小限に抑えるための修正を迅速に実施できます。ただし、適切なトレーニング、チーム全体の理解と協力、適切なツールが欠如している場合、それは一貫性の欠如やバグの見落としにつながる可能性があります。

  • 回答者の3人に2人が、開発者がエンドツーエンドテストに関与していると報告
  • 回答者の3人に1人が、顧客が本番環境のバグを報告していると報告

上記の統計は、内部テストプロセスの重大なギャップを浮き彫りしており、チームが顧客をエンドユーザーテスターにして依存している現状を浮き彫りにしています。回答者の29%が、パッケージ化されたアプリを製品に導入することの顧客体験への影響を懸念していると回答していることを考慮すると、開発者を適切なトレーニングで効果的なテスト計画を実行できるようにする同じ懸念がなぜ存在しないのか、疑問に思わざるを得ません。

過剰なツールがテストのサイロを作る

驚くべきことに82%のチームが品質計画の一環として複数のテストツールを使用しています。これはカスタムアプリとパッケージアプリの統合の普及と一致しています。これに対し、統一されたテストポリシーの重要性を認識しているチームの割合は81%に留まっています;より多くのツールをテストプロセスに統合するほど、真に統一された計画を確率する可能性は低くなります。多くの場合、単一のテストツールでは、各パッケージアプリやカスタムアプリごとに急速に変化するユースケースに対応できません。チームは特定のアプリをテストするために特定のツールを使用することになります。結果として、各ツールの制限により、テストの全体像が不完全で孤立した状態になります。この利用状況は企業の規模にも依存し、大規模なエンタープライズ企業ほど、複数のアプリと複数のテストツールに依存する可能性がはるかに高いです。

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AIが品質の新たな顔に

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AIが開発の環境を変革していることは疑いようのない事実ですが、真の機会(そして組織の成功に不可欠となる領域)はテストにあります。調査では、過半数が開発とテストの両方のプロセスでAIツールを活用していることが明らかになりました。この広範な採用は、今後数年間のAI導入の重要性を強調しています。

  • 55%の組織が開発とテストにAIを活用
  • 44%の組織は、AIが生成するコードの品質向上により、テストの必要性が減少していると報告
  • 現在AIを活用していない組織の38%が、来年中にAIの導入を計画

企業規模がデメリットを決定する

多くの組織がAIの活用を増加させていますが、その導入状況は一様ではありません。大企業は開発にAIを導入する可能性が高く、29%が利用しているのに対し、平均は21%です。これは、迅速かつ大規模な展開が可能な点と一致しています。興味深いのは、DevOpsを完全に採用したチームは、全体的にAIの採用率が大幅に高い点です。開発においてAIを活用しているチームは65%、テストにおいて活用しているチームは70%に上ります。すべてのワークフローを自動化しているチームでは、AIの活用率がさらに高く、開発で74%、テストで71%がAIを活用しています。

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テストにおけるAI:チームがどのように使用しているか

AIのテストにおける最も一般的な用途は、実行するテストの優先順位を決定することでテスト実行を最適化することです。この戦略は55%の組織で採用されており、興味深いことに、イギリスではこの目的でAIを活用する組織の割合が63%とさらに高い水準にあります。企業規模もAIを活用したテスト実行の最適化への採用率に影響を与えており、大企業では65%が採用しています。

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企業がDevOps変革のどの段階にあるかは、AIをテストに活用する手法の重要な指標でもあります。完全にDevOpsチームを構築している企業は、まだその移行を目指している企業に比べて、テストケースやテストスイートの管理にAIを活用する可能性が2倍以上高いことがわかっています。

13 - 2025 TiDO Japan全体として、AIのテストへの採用が進んでおり、特にテスト結果の要約(2024年:45% → 2025年:49%)とテストケースの生成(2024年:38% → 2025年:47%)において顕著です。これらの増加は段階的なものですが、今後数年間にわたって継続する傾向を示すものと予想されます。

未だ障壁を取り除く必要がある

AIが私たちの日常生活にどれだけ広がっていようとも、組織がAIの導入に踏み切る前に克服すべき課題が依然として存在します。最大の懸念はセキュリティ(34%)、品質(31%)、およびAI専門知識の不足(30%)です。ただし、興味深いことに、具体的な懸念事項は組織の規模によって異なります。AIツールのROI(投資対効果)へ懸念していることに加えて、その使用を制限する企業ポリシーを保有している可能性も高いです。

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このデータは、AIが開発とテスト環境を変革する可能性を浮き彫りにしていますが、同時に、組織がセキュリティ、品質、専門知識に関する課題を解決し、ツールの多様なメリットを最大限に活用するため、適切な対応が不可欠であることを示しています。統合を戦略的に進め、特定のニーズとガイドラインに適合するツールを適切に評価し、長期的にコスト削減につながるツールに予算を割くことで、組織はこれらの障壁を比較的簡単に克服できます。

より大きな予算が将来の品質への取り組みを促進

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組織が加速するリリースサイクル、パッケージアプリの活用拡大、AIの統合といった複雑な課題に対応する中、戦略的な投資が不可欠となっています。その点において、当社の調査では明確な傾向が浮き彫りになっています:問題領域の改善に向けた対策として、品質保証予算の増額が進行中です。投資は単に人員を増やすことに限らず;リソースを戦略的に配置し、自動化、ツールの強化、スキルアップ施策の推進に充てることに焦点を当てています。

その一方で、51%の組織が、増加した支出の一部が実際にチームへの新たなQA人材の採用に充てられていると報告しています。これは、彼らが計画している追加支出を実行するために、より多くのリソースが必要だと認識していることを示しています。例えば、自動化ツールへの支出を増やすと回答した62%の組織と同様です。これらの人的リソースと技術的機能への投資は、開発のペースと同じ速度で品質向上を推進するコミットメントの表れと言えます。

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自動化推進の背景には、効率向上だけではありません。確かに効率向上は重要なメリットですが、本質はAIを有効活用し、テストのメンテナンスやカバレッジといった生産性低下要因に対処しつつ、プロセス自体を効率化することにあります。現在開発またはQAにAIを使用していない組織の38%が、来年中にAIへの投資を計画しています。これは、AIが開発ライフサイクルにおける重要性を認識する動きが拡大していることを示しています。

すべてのワークフローを自動化していると報告する組織は、同業他社に比べて将来的に自動化への投資を継続する可能性がさらに高いことが明らかになりました。これは、自動化が既に利益をもたらしていることから、さらに投資を拡大することでまだ実現可能な利益が残っていることを示しています。

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予算を戦略的に配分し、AIを活用した自動化を優先することで、組織は品質プログラムの未来に向けた堅固な基盤を築き、加速するDevOps環境の要求に対応し続けることができます。

DevOpsにおけるテストの未来をナビゲート

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2025年DevOpsにおけるテストの現状レポートは、ソフトウェア開発とテストの未来において、私たちは重要な転換点に立っていることを強調しています。DevOpsの実践とAI駆動開発によって促進されるスピード追求の勢いは、リリースサイクルを変革し、業界が迅速なイノベーションと市場投入までの時間の短縮にコミットしていることを浮き彫りにしています。

このスピード追求は、品質との間の緊張関係も浮き彫りにしています。QAチームの59%が、開発スピードの向上によりテストプログラムに大きな負担がかかっていると指摘しています。生産性の低下は、主にテストのメンテナンス(チーム時間の20%を占める)に起因し、カバー率の持続的な不足(80%以上のテストカバー率を達成しているチームは15%未満)が、堅牢で信頼性の高いソフトウェアを構築する最善の努力を妨げています。生産環境で発見されるバグの3分の1が依然としてエンドユーザーによって発見されているという事実(回答者の80%が顧客満足度が高いと報告しているにもかかわらず)は、組織が無視できない危険な乖離を示しています。

この複雑な環境をナビゲートするためには、自動化と統合テストへの戦略的な焦点が必要です。現在のテストツールと実践のサイロ化は、82%の組織が複数のテストツールを使用しているにもかかわらず、ほぼ同じ割合の81%が統合テスト戦略の重要性を認識しているという事実から、より統合されたソリューションの必要性が急務であることを浮き彫りにしています。これらのソリューションは、組織のワークフローを効率化し、コラボレーションを促進し、生産性を向上させるだけでなく、AIの変革力を活用すべきです。

AIは単なる一過性のトレンドではなく;DevOpsにおける品質の新たな顔であることが明白です。開発とテストにAIを採用している組織は既に55%に上り、成熟したDevOpsチームが70%の採用率をリードしていることから、AIを活用したテストが成功するDevOps戦略の不可欠な要素となることは、これまで以上に明らかです。この傾向は、ガートナーの2023年の調査結果とも一致しています。同調査では、「63%の組織がAIコードアシスタントのパイロット導入、展開、または既に展開済み」とされ、さらに「2028年までにエンタープライズソフトウェアエンジニアの75%がAIコードアシスタントを使用するようになる」と予測されています(2023年初頭には10%未満)。(Gartner プレスリリース, “Gartner Says 75% of Enterprise Software Engineers Will Use AI Code Assistants by 2028,” April 11, 2024, GARTNERは、米国および国際的にGartner, Inc.および/またはその関連会社の登録商標およびサービスマークであり、許可を得て使用されています。無断複写・転載を禁じます。)

テスト実行を最適化し、テストメンテナンスを自動化し、カバレッジを拡大するソリューションを見つける能力が、チームが最終製品において速度と品質の両方を達成する道筋を提供します。

結論として、DevOpsの未来は戦略的なバランスにかかっています:

  • 速度、品質、および顧客満足度の公平性:組織はイノベーションを継続しつつ、品質を優先し、顧客満足度が成功の最終的な指標であることを認識する必要がある。
  • 自動化と統合テストの採用:生産性低下とテストのサイロに対処するために、自動化と統合テストを活用するプラットフォームへの投資が不可欠。
  • AI駆動のテストは未来への道:テストプログラムにAIの活用することは、もはや贅沢ではなく、必要不可欠です。速度と品質基準を高く維持するには現代的なソリューションが必要であり、それらはAIによって構築、駆動されています。

これらの原則を採用することで、組織はAI駆動のDevOps時代の課題と機会を効果的に乗り越え、イノベーションを推進し、高品質なソフトウェアをデリバリーし、QAチームをリソースとして最適化し、顧客満足を実現できます。